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2013/04/02

Steins;Gate 比翼恋理のだーりん 感想

STEINS;GATE 比翼恋理のだーりん

「よくもまあ、ここまで台無しにできたものだ。」
というのがプレイした後の感想だ。

今作は「Steins;Gate」のファンディスク的な意味合いを持つスピンオフ作品だ。主にラボメンの女子達(一人は男)との恋愛要素が中心となったゲームで、シリアス展開はほとんど無い。科学アドベンチャーシリーズの1作目である「CHAOS;HEAD」にも「CHAOS;HEAD らぶChu☆Chu!」という続編があるが、その流れを踏襲しているのだろう。

恋愛要素が薄く、殺伐とした雰囲気の「CHAOS;HEAD」に、ラブコメ要素を盛り込んだ後日談である「CHAOS;HEAD らぶChu☆Chu!」が出ることの意味はある。しかし、今作は完全にifストーリーであり、「Steins;Gate」自体に究極の恋愛が描かれているので蛇足の感を禁じ得ない。

「Steins;Gate」では恋愛要素の無かった桐生萌郁ルートとダルルートでもある阿万音鈴羽ルートには意味が無いこともないが、それ以外のルートはやまなし、おちなし、いみなしである。そもそも、本編でそれぞれのヒロインとの恋愛は見事に描かれており、クオリティも今作より高い。本編を越えるでもなくただ単に恋愛要素を描くことの意味が無いのだ。その中でも特に酷いのが漆原るかルートと椎名まゆりルートだ。プロットもストーリーも文章もレベルが低く、まさに中学2年生が書いたかのような拙文である。るか役の役者さんの演技が良くなっていたのにもったいなすぎる。(逆にまゆりは下手になってた……。ボソボソ喋りの萌郁より聴き取りづらい。この人P4Gのマリー役の人か。納得。)他にも、ダルの一人称が「僕」ではなく「俺」になっていたり、いくら食べても太らないというキャラが他のキャラが太らないことを羨んだり、全体の整合性も取れていない始末だ。

何よりも許せないのは、「Steins;Gate」で築き上げた秀逸な設定を全部うっちゃってしまったことだ。この作品における世界線移動は何の必然性も偶然性もなく、科学アドベンチャーシリーズの醍醐味である説得力や「らしさ」が全く感じられない。「Steins;Gate」という作品の魅力の大半は世界設定であり、キャラクターはスパイスということを理解していないのだ。

高い評価を受けた作品には送り手以外に受け手の意志も宿る。そしてそれはゲームにおいては顕著である。しばしばゲームに関する論争が感情的になるのはその現れである。多くの愛を受けたゲームであるほど、その続編が期待外れだった時、愛は憎しみへと変わる。ゲーマーとはかくも厄介なものなり。

Steins;Gate 感想

STEINS;GATE

コンピュータゲームにおいてタイムトラベルやパラレルワールドという題材は新しいものでも希少なものでもない。反復と複製が得意なコンピューターにとっては格好の題材といえるだろう。そして複数のヒロインとの恋愛を目的にしたギャルゲーも、見方によってはパラレルワールド的な世界観であり、コンピュータゲームとの親和性が高い。ギャルゲーに多くのタイムトラベル、パラレルワールドものが集まってきたのは自然なことである。「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」、「Ever17」、「ひぐらしのなく頃に」、「CROSS CHANNEL」、「Fate/hollow ataraxia」、「スマガ」等々、このテーマの作品は良作が多い。

「Steins;Gate」はそれらの中でも特異な立場にある。それはタイムトラベルそのものを真摯に扱っているということだ。今作のタイムトラベルは荒唐無稽ではあるが「納得」できるのだ。物理学や脳生理学なんかで「らしく」見せることに成功している。そして秀逸なのは、世界線収束範囲(アトラクタフィールド)理論の創造である。この発明によってタイムトラベルが万能なものではなくなり、物語に重みを与えているのだ。

この作品を語る上で外せないもう一つのポイントは、ふんだんに盛り込まれるオタク文化、2ちゃんねる文化のテクストだ。2009年発売なので現在(2013年)では既に死語になりつつある言葉もちらほら見られる。そういった意味で、この作品は時代に左右される作品である。しかし、そういった弊害よりも、時代を鮮やかに切り取って描き切っている点こそが重要である。過剰な部分があることは確かだが、その時代の匂いを感じさせる作品は貴重である。10年後、恐らくこの作品はあまり話題にならなくなるだろう。しかし、30年後、リバイバルする可能性は高い。それは過去への郷愁であり、未知への好奇心でもあるだろう。

今回、PSVITA版で久しぶりにプレイして感じたことは、アドベンチャーゲームの名作はガンガンPSVITAに移植してくれということだ。一度プレイしたアドベンチャーゲームは据え置き機で何度もプレイしようという気がしないのだ。やはりPSVITAとアドベンチャーゲームの組み合わせは最高である。違法ダウンロードで痛手を受けているエロゲ業界もPSVITAに移行すればいいのに。

2013/03/09

デビルサマナー ソウルハッカーズ 感想

デビルサマナー ソウルハッカーズ

セガサターン版の「真女神転生デビルサマナー」にはまり、後にPSP版も購入したが、なぜか「ソウルハッカーズ」はスルーしてきた。3DS「真女神転生4」に向けてお布施として今作を購入、激しく落胆した。「ペルソナ4ザ・ゴールデン」で素晴らしい移植を見せてくれた会社と同じ会社とは思えない出来だ。

今作の移植は新オープニング、フルボイス化、システムのリファインと新悪魔の追加などである。移植作であり題材的にも仕方ないとはいえ、とにかく古くさい。そして、フルボイスの弊害だ。映画や演劇などに関わったことがある人や好きな人なら分かると思うが、話し言葉と書き言葉は全く違うものだ。移植作ということでセリフの改変を敢えてしなかったとも言えるかもしれないが、その結果は散々である。文章なら問題なくとも声が付くと急に不自然になるのだ。フルボイス化をするのなら、そこまでしっかりとケアしてほしかった。

ゲームプレイに関しては非常にユーザーフレンドリーになっており、プレイのストレスを極力排しようという姿勢が窺える。だが、それが今作では仇となっている。デビルサマナーシリーズの核となるものはダンジョン探索と仲魔システムだ。 ストーリーははっきり言っておまけである。罠だらけのダンジョンを言うことをきかない癖の強い仲魔達とビクビクしながら進むのがこのゲームの醍醐味なのである。いつでも難易度変更、オートマッピング、パーティー属性無視、オートアナライズ。こんなものを用意してたらこのゲームの肝をスポイルするだけなのだ。使わなきゃいいじゃんという声も聞こえてくるが、人間というものは易きに流れるものである。ちょっとだけちょっとだけと思いながら結局はそれに依存することになる。そうなったらどうなるか、ゲームの肝のダンジョン探索と仲魔システムが何の歯ごたえもないものとなり、残ったものはおまけ程度のストーリーとそれに付随する変な言い回しのフルボイスだけである。

恐らくこのゲームの制作の中心メンバーは若手主体だったのだろう。もしかしたら彼らも「ソウルハッカーズ」をプレイしたことがなかったのかもしれない。そう考えなければこのゲームの肝をスポイルするシステムを搭載するはずがないのだ。3DSで「真女神転生4」を出すにあたり、資金調達と若手の育成のために作られた作品というイメージだ。

私が「ソウルハッカーズ」をプレイするのは今回が初めてだったが、この作品が多くの人に愛されていたことは知っている。私も当時プレイしていれば 好きになっていたかもしれない。「真女神転生デビルサマナー」は大好きなんだから。だからこそ、片手間の移植は残念でならない。最後に、3DSLLは糞だ。

極限脱出ADV 善人シボウデス 感想

極限脱出ADV 善人シボウデス

PS Plus無料お試しキャンペーンでアンチャーテッドと共にPSVITA作品でフリープレイできるものに今作も含まれている。ただし、私がプレイしたのは3DS版である。しかしいい機会なので感想を書いてみよう。

今作のシナリオライターであり、制作の中心となっているのは打越鋼太郎氏である。「ルートダブル」の中澤工氏と共に手掛けた名作「Ever17」のシナリオライターだ。この作品はDSで出た「極限脱出 9時間9人9の扉」の続編であり、設定や一部登場人物が共通しており、今作だけでも遊べないことはないが前作をクリアしておく方がアドベンチャーゲームという性質上望ましい。

結論から言えば及第点には届いていない凡作だ。脱出ゲームとアドベンチャーゲームの融合したゲームだが、とにかくテンポが悪い。謎解きはそこまで難解なものはないが、操作性が悪いのでまだるっこしい点が多々ある。肝心なストーリーもキャラクターの魅力が薄く、そもそも最初の印象から乖離していくキャラクターがほとんどいないので、意外性のある展開にも感動がない。起こるべくして起こる展開のようで淡々としすぎているのだ。また、続編ありきの作り方になっているので、全てに決着がつかないまま終わるのも問題だ。話の主題が次作を待ちわびさせるには弱く、話が続くことへのモチベーションが湧かない。そして恐らくだが次作の制作は現状では厳しいだろう。商業作品で続き物ありきの制作手段は常にシェンムーの悪夢を念頭に置くべきである。

「Ever17」でその才を競った中澤氏と打越氏。2人の最新作の比較が印象的だ。このまま打越氏が才能を浪費してしまわないことを願う。次回作があるのなら良い意味で予想を裏切って欲しい。

最後に、私は3DSLLを所持しているのだがこのガジェットは糞だと言っておこう。

ルートダブル -Before Crime * After Days- 感想


このゲームは多くの障害にぶつかってきた。発売直前に東日本大震災と福島第一原発事故が発生し、原子炉事故を題材とした今作は発売自粛または内容変更の可能性。Xbox360版発売から早1ヶ月半でWindows版発売の発表。多くの困難を綱渡りして今作は世に生まれたのだ。この誕生に賞賛と感謝を。

ジャンルはアドベンチャーだが、単純な選択肢による分岐ではなく、センシズ・シンパシィと呼ばれるシステムが搭載されている。物語の分岐点になると、分岐に関わるキャラクターへの共感値の入力が解放される。例えば、意見を対立させている場面では共感値を高く設定した方の意見に主人公が同意し、危機的状況において自分自身の値を低くすると自らを省みない無謀な行動を取る。最初の内は仕組みを完全に理解するのは難しいが、多様な状況に適応する非常に優れたシステムである。そしてこのシステムは今作の大きなテーマにも合致しており、作品にしっかりとした一貫性を与えている。

監督の中澤工氏は名作「Ever17」でも監督を務めた。そのため今作もネタバレ厳禁の作りとなっている。2人の主人公の視点から描かれる物語は、最終的には9人の主人公の視点へと拡がっていき、グランドフィナーレに収束する。その物語の行方はぜひ自らの目で体験して欲しい。

この作品の欠点を挙げるとしたら、壮大な物語、多様なギミック、膨大な伏線に伴うプレイ時間の長さである。グランドフィナーレを迎えるまでに30時間。最近では据え置き機では正直きつい。是非とも、是非とも、携帯機への移植を検討していただきたい。そして、アドベンチャーゲームの携帯機移植と言ったらPSVITAしかないでしょう。これだけの名作を埋もれたままにしておくのはMOTTAINAI。SCEの有能営業部の出番である。仕事しろ。

2013/03/02

アンチャーテッド 地図なき冒険の始まり 感想

アンチャーテッド - 地図なき冒険の始まり -

PSVITA起死回生の値下げと共に始まった、PS Plusの無料お試しキャンペーン。PSVITAのフリープレイは全部で6タイトルという大盤振る舞いだ。そしてこの中に、何となく買いそびれていたアンチャーテッドが含まれているんだからやらない手はない。

今更説明するまでもないが、アンチャーテッドシリーズはPS3で3作が出ている人気作だ。1作目の「エル・ドラドの秘宝」は当初認知度は低かったものの、緻密なグラフィック描写となんと言ってもテレビの洋画劇場を思わせる演出と吹き替えの妙によって口コミで評価が高まった。しかし、アンチャーテッドを真に人気作としたのは2作目の「黄金刀と消えた船団」である。ストーリーの規模、グラフィック、アクション、音響、BGM、キャラのモーション、そして怒濤のスペクタル演出。すべてにおいて度肝を抜く進化を遂げた2作目は、多くのゲーム賞を獲得し、ゲーマーにもプレイヤーにも大きな影響を与えた。

さて今作はアンチャーテッドでは初となる携帯機で、開発もノーティドッグではない。だが、紛うことなくアンチャである。2作目以降のようなど派手な演出はほとんどなく、全体的に地味な感じに仕上げっているが、やはりアンチャである。つまり、アンチャーテッドをアンチャーテッドたらしめている要素は確実に押さえている。アクロバティック崖登り、銃撃戦、謎解き、お宝収集、ネイトのぼやき、そしてサリー! ゲームの後半、サリーが登場しただけでこちらのテンションはMAXだ。このゲームの魅力はキャラクターの魅力でもあることを実感した。

VITA独自の機能としてのタッチ操作は想像以上にマッチしている。謎解きのタッチ操作や写真撮影はそのまま本家に導入してもいいくらいの楽しさがある。PS3の本家ではあまり表現できていなかった、考古学に造詣の深いトレジャーハンターとしてのネイサン・ドレイクを上手く操作で表現できている。

VITAのローンチ作品であるが、質も量も充分な出来である。ノーティードッグの手掛けるエポックメイキングなものは無いが、しっかりと要点を押さえた手堅い作品といえるだろう。これだけのものをただで遊べたんだから儲けもんだ。

2013/01/21

Skyrim フォント変更覚え書き

有志版のフォント変更セットに満足できなくなったので自作してみる

(1) ここからFlashDevelopとFlex SDKをダウンロードしインストール
(Flex SDKはFlashDevelopに含まれる)


(3) skyrim-font-embedderのasset\fontsフォルダに使いたいフォント(.ttf .otfなど)を入れる。フォントはなるべくJIS第二水準まで収録されているものを選ぶ


(4) skyrim-font-embedderのfonts_ja.as3projをダブルクリックしてFlashDevelopを起動する


(5) FlashDevelopの右側のProjectパネルからsrc\Main.asをダブルクリックで開く


(6) Main.asの27行目はインターフェース(メニューや字幕等)のフォント設定。以下のようになっていると思うので、赤字の部分を変換したいフォント名にする

[Embed(source = '../asset/fonts/GL-Tsukiji-4go-TESV.ttf', fontName = 'skyrim_every', embedAsCFF='false', mimeType = 'application/x-font')]

例えばあずきフォント(azuki.ttf)をSkyrimのフォントにするにはasset\fontsフォルダにazuki.ttfをコピーして27行目を以下のように修正する

[Embed(source = '../asset/fonts/azuki.ttf', fontName = 'skyrim_every', embedAsCFF='false', mimeType = 'application/x-font')]


(7) Main.as[Embed~のfontName = 'skyrim_every' はfontconfig.txtで設定する際のフォント名になるので、特定のフォントだけ変えたい、例えば手紙のフォントだけ違う物にしたいと思ったら、

[Embed(source = '../asset/fonts/YOzK.TTC', fontName = 'skyrim_every2', embedAsCFF='false', mimeType = 'application/x-font')]
var every2font:Class;

という2行を29行目以下に追記して、fontconfig.txtの

map "$HandwrittenFont" = "Skyrim_JP_HandWriteFont" Normal
map "$HandwrittenBold" = "Skyrim_JP_HandWriteFont" Normal

map "$HandwrittenFont" = "skyrim_every2" Normal
map "$HandwrittenBold" = "skyrim_every2" Normal

に修正してやれば手紙だけ別のフォントになる

注意:skyrim-font-embedderのreadmeには$DialogueFontの指定フォントを変えれば会話文のフォントを変更できると書いてあるが、実際は不可能。会話文は$EverywhereMediumFontに含まれる


(8) 修正が終わったらFlashDevelopのツールバーのTest Projectボタンを押すかキーボードのF5キーを押す。問題がなければしばらく後にサンプルウィンドウが出てくる。Flash Developの下パネルのOutputにもdoneと出る


(9) 全て完了すればskyrim-font-embedderフォルダのbin以下にfontconfig.txtとfonts_ja.swfが出来ているので、fonts_ja.swfをskyrim\data\Interfaceにコピーする


(10) skyrim\data\Interfaceのfontconfig.txtの上の方に

fontlib "Interface\fonts_ja.swf"

という記述を追加して、変えたい項目のフォント名を変更する。フォント名はskyrim_everyやskyrim_every2などの自分で設定したもの


(11) このままではfontconfig.txtの$SkyrimBooksに他のフォントを指定しても変更できないので、おばちゃんのスカイリムガイド - book.swfと本のフォントについてから修正版book.swfをダウンロードして上書きする

これでフォントの作成は終了。参考サイト様、フォント作成者様に感謝


[フォント変更例]




無難無難アンド無難

2013/01/15

Far Cry 3 感想

ファークライ3 初回限定特典「アイランド・サバイバル・ガイドブック」付き

南の島でリゾート気分を味わうゲーム。希少な動物の狩りをするも良し、ハンググライダーで空を優雅に散歩するも良し、様々な乗物でレースをするも良し、島の植物から作った薬でハイになるも良し、もちろん悪者との銃撃戦やステルスキルも揃えております。

とにかく舞台となる島の作り込みがしっかりしていて素晴らしい。起伏に富んだ地形を生かしたマップモデリングで戦略性も高く、突撃プレイもステルスプレイも可能だ。「アサシンクリード 3」の無駄に広くしただけのマップとは大違いだ。何よりマップ解放がすみずみまでされるのが気持ちいい。

プレイ時間はマップ全解放、敵拠点全制覇、その他諸々達成度8割ほどで80時間ほど。メインシナリオだけを追えば10時間ほどだろうか。やれることが多すぎて楽しいのだが、さすがに終盤はだれてくる。美しい南の島の景観も中盤には飽きてくる。マップが広大な割には変化が無いのだ。

今作でメインヴィジュアルとして採用されているバースという敵がいる。残忍で病質的、気分屋で執着的、物語的には非常に魅力的な人物だが、もう少し活躍させても良かったのではというところで退場したのは残念。バースに限らず本作のボス戦はほとんどQTEというのも賛否が分かれそうだ。私はQTEによって演出が強化され、インパクトのあるものになるのなら嫌いではない。しかし、全部ナイフ戦というのはどうなんだ。

ここ最近、快進撃を続けるUBISOFTの力を見せつけた良作。勢いだけは完全にEAを超えてきたようだ。だが、これだけは言っておかないといけないだろう。uPlayは糞。こんなもんにリソースを割かないでアサクリ3に割いてくれ。